2013年3月2日 土曜日に開催されました、「OpenFOAM勉強会@関東」のサマリーをお送り致します。今回の担当は工学院大学 流体工学研究室 学部4年のKonishiで御座います。
私が初めてOpenFOAMに触れたのは3年次後期開始後の事。「世間のPCは皆Windows」と思い込んでいた当時、「Linux」の存在に出鼻を挫かれ、チュートリアル「cavity」すら理解出来ず悪戦苦闘し、「前途多難」と不安な念を抱いて居りました。ところが一年半経過した今、気付けば「大規模数値流体解析」と題して、OpenFOAMによるk-ω SSTモデルでの要素数1億2千万要素解析を行う事が出来、結果としてこの様な場に現れる事と成りました。私見では有りますが、大学生の身からOpenFOAMを眺めると「OpenFOAMはCFDを学ぶ事に関して非常に有用なツールである」と考えています。スキーム・緩和係数等を自ら設定する必要があるOpenFOAMは一見「面倒で難しいツール」と思えるかもしれません。しかし、これらを自ら設定し、結果を得、各々を比較する事で、自分が変更した部分が与える「影響」を知る事が出来ます。これらが積み重なる事で、「CFD」独特の感覚が身に付くのでは無いでしょうか。また、昨今ではベンダー各社がオープンソースのサポートを始めて居り、OpenFOAMも例外では有りません。業界でも「オープンソースの動向は無視出来ない」と考えられている事から、OpenFOAMの有用性や今後の展望は明るいと感じて居ります。
さて、本勉強会の構成は「数値流体力学輪講の準備(その2)」→「各自テーマ進捗状況の報告及び質問」→「C++基礎講座[第5回]」でした。
「数値流体力学輪講の準備(その2)」では、数値流体力学を学ぶ際に必要な数学知識の講義が行われました。今回の内容は「ベクトル解析」という事で、ベクトルの基礎知識・内外積・勾配・発散・回転・ラプラシアンと、これらを何処で使用するのか等が解説されました。レベルとしては高校数学から大学数学の範囲をカバーしたもので、「ベクトル自体が苦手」「ベクトルを学習し直したい」と言った方には有用な御話だったのでは無いでしょうか。この解説を基に各自演習書等で学習し直すと、ベクトルの理解が深まるかと考えて居ります。因みに2月の輪講準備では微積分が中心で、次回4月はベクトル解析の発展とテンソル解析が中心と成るそうです。
続いて、恒例の「各自テーマ進捗状況の報告及び質問」についてご報告致します。各業界に御勤めの方々か様々な分野における「OpenFOAM事例」を発表して下さいました。M様からは球周辺の流体解析における「商用ソルバとの比較」や「Skewnessの依存性」について御話頂きました。本御発表ではddt Schemesの「Euler」と「backward」による違いに関する内容で活発な議論が行われました。
I様からは旋回シミュレーション(サイクロン)の解析に関する御発表を頂きました。解析の参考と成る文献及び商用ソルバとの比較を通し、OpenFOAMによる境界条件の種類や設定値に関する議論が活発でした。
S様からは最適化ツール「DAKOTA」を実際に御使用に成ったインプレッションや結果、プログラムの設定方法について御話頂きました。特にOpenFOAM等様々なツールとの連携方法や注意点・「DAKOTA」使用後の解析結果を御提示頂きました。S様は「やはり初心者はGUIソフト『Jaguar』から使用を始めるのが良いのでは」とお考えで、今後Jaguarを通したDAKOTAの事例が増えるのでは無いでしょうか。
N様からは「OpenFOAMの未来」に関する御考えをお話頂きました。私事では有りますが、私の就職先は商用ソルバーを展開するベンダーです。この身として、N様からの「商用ソフトとオープンソースは競合しない」「両者が補い合ってCAE自体の裾野が広がる」との御考えに衝撃を受けました。OpenFOAMをベースとしたソルバーFoamplus等の存在に触れつつ、OpenFOAMベースのビジネス・展開に関する御期待を御話頂きました。
残念ながら諸事情により、最後に予定されて居た「C++基礎講座[第5回]」は実施されない事と成りました。以下の写真は、予定外の小休止時での活発な御議論風景です。
(恐らく)毎回恒例のピザパーティーへ突入です。ビールを片手に杯を交わし、CFDや現代の燃料事情等、理系らしい内容で雑談が交わされました。
その後は第二次懇親会が行われた事でしょう。私は逃れる事が出来ない用事により離脱しなければ成りませんでした。ところが、参加者のN様が第二次懇親会風景の写真を送って下さいました。誠に有難う御座います。
さて、この様な「OpenFOAM勉強会」は日本各所で行われており、各地で活発な議論・事例紹介が行われています。また関東では、勉強会開始前に「初心者向け講習会」が開かれ、OpenFOAMの導入から勉強する事が出来ます。開催場所によっては「FreeCAD講習会」等も行われている為、参加経験の無い方は是非、「オープンソースの聖地巡礼」的な意味合いで各地を回り、オープンソースのソフトウェアに触れてみては如何でしょうか。